障害者手帳交付のメリット

　私が障害者手帳の交付を最初に受けたのは、２４歳の時でした。両側５級のため、1つ等級が上がって、４級でした。当時は、自分が障害者だという認識が全くなかったので、障害者手帳が交付されて、本人が一番驚きました。診断書を書いてくださった医師は、私がこれから就職活動をすることを知っていたので、快く診断書を書いてくださったのではないかと思います。

　その後、障害者の雇用枠で就職し、５年後の２９歳の時に右股関節固定術を受けました。固定術を受ける前までは、痛みを我慢すればできないことは何もなかったのですが、術後は、正座、和式のトイレの使用ができなくなりました。特に大変だったのは歩行で、杖なしではほとんど歩けませんでした。通勤、買い物、通院すべて車を利用しました。

　特に困ったのは、通院です。病院の駐車場は狭いところが多いため、やむなく路上駐車をしました。いけないことは十分わかっていましたが、体調が悪いために余裕を持って行動することができません。ぎりぎりまで寝ていて、意を決して起き上がり、通院するのが常でした。

　買い物も同じです。余裕のある行動がとれないため、路上駐車をよくしました。デパートの駐車場は、開店前に到着していると、スムーズに入れましたが、少しでも遅いと３０分、１時間待たされます。それでは、疲れがますます溜まってしまい、仕事に影響が出てしまいます。必要なものを大急ぎで買って、すぐに家に帰る習慣ができていました。

　そこで、活躍したのは、「身体障害者等駐車禁止指定除外指定車標章」です。

　更に有利だったのは、車にかかる税金の免除でした。固定術後は、左足で運転できるように車を改造しました。その費用と税金免除がほぼ同じだったので、健康な人と同じ費用で、改造車に乗れたのは本当に助かりました。車の改造費用の補助は、収入があったために受けられませんでした。

　他には、100ｋｍ以上移動した時には、乗車賃の半額が免除になったことや、高速道路料金の半額、美術館、博物館等の入場料の減免などが受けられますが、体調が悪く外出することがほとんどなかったので、どうしても必要な制度とは思えませんでした。むしろ、元気な人だけが利用できる制度には、不公平感さえ抱いていました。今利用している障害者の施設も、仕事をしていて、税金を納めている時には、忙しくて利用できず、高齢者が盛んに利用しているのを見ていると、やはり不公平だと思っていました。

　今、仕事を何度も変わって色々な経験をしたことで言えるのは、やはり障害者が安心して仕事ができる環境が、今の日本の社会にはないということです。そのことを、官僚や議員達が良く分かっているために、税金の控除や車の税金の減免、美術館などの公共機関の入場料の減免サービス、JRや飛行機等の公共交通機関の減免などのサービスでお茶を濁しているいるのではないかと、勘ぐってしまいたくなります。

　しかし、私たち障害者が本当に求めているのは、安心して暮らせる日本社会の実現です。差別のない社会、就労の場で適切な配慮を得て、安心して働きたい。そして安定した収入が得られたならば、税金の控除はいらない。むしろその税金を使って、差別のない日本社会を作る努力を、責任ある人たちに務めていただきたい、と切に願っています。

　そして、上述したようなサービスの原資は、もっと重度の障害者の方たちが、更に生活しやすい環境を整えるために使って欲しいと思っています。

　４年前に障害者手帳は３級に上がりました。両側人工関節になったためです。増えた行政サービスは、ガソリン代の補助と医療費の無料です。この制度は、自治体によって違いがあるようです。４級と３級でなにも差がないという自治体もあるようです。

　しかし、このサｰﾋﾞｽよりも、差別のない社会で、安心して働き、税金を納める側になることを目指して、私はリハビリに精進しています。

　絶対にできないことがある障害者には適切なサービスを、そして私たちのようは、見えない障害当事者には、お金ではなくて、適切な配慮をお願いします。公助なくして、自助はあり得ないのです。私が求める公助は、自立できる環境の整備なのです。

　決しておねだりで、障害者手帳の交付を求めているのではないことを、理解していただきたいと思います。